東京粉末の初の液体チョーク「Garage」と「High Garage」を本日より発売しています。粉ライフな我々も、ついに液体です。
以前の粉末TV(youtube)でも話に出ましたが、実は長年液体チョークの開発を続けてもなお、満足のいく液体チョークはできておりませんでした。”普通の液体チョーク”の域を抜け出せなかかったのです。ところが、先の緊急事態宣言において強制的に自宅でのトレーニングを迫られたおかげで、まったく新しいタイプの液体チョークを作ることに成功してしまったのです。
汚してはいけない場所でも、ストレスの無いフリクションを
というコンセプトで、舞わないけど粉の感触に近いフリクションを出す方法はないかと、単身、工場で研究を再開しました。相棒はBeastmaker2000です。
制約が新しい可能性を生むことを、身を以て体験しました。強制自粛トレーニング環境の上、アルコールや消毒に関する試薬が全国的に品切れとなっていたせいで、いまあるものを使うという限られた選択肢を思いつく限り試した結果、想像を超えた結果を得たのです。
ただ、この時は緊急事態宣言下でしたから、フィールドでは全くテストできていないし、他人の意見も一切聞かずに試作品が完成してしまったので、この効果はかなり疑わしかったです。そこで、同じく全国の自粛中のクライマーに呼びかけ、被験者クラブ・パブリックという形で、4月末と5月半ばの2回、合わせて150名以上の被験者にテストをしてもらいました。(沢山の心暖まるフィードバックを頂戴し、液体チョークなんてどうでもよくなるほど嬉しくて感動しました。)テストの結果は、#被験者クラブ で検索してみてください。プレゼント企画ということもあり、ポジティブなフィードバックをいっぱいもらいました。メールやメッセージなどで、いくつかのとても参考になる見解や感触も聞けて、これがHigh Garageに繋がったわけですが、その前に、Garageです。製品版のGarageは、基本的にテストで配布した赤文字の試作品をスケールアップして量産型にしたものです。
GARAGE
ギリギリ自分が許容できる粉のフリクション感を維持しつつも、まったくと言っていいほど舞いません。しかも、手にチョークが付いている状態で、服や壁などを触っても、チョークが付着しないのです。作った本人がびっくりしました。文章よりも動画を見ていただいた方が早いでしょう。
被験者クラブ参加者撮影
これが、自宅トレーニング用の液体チョーク「GARAGE」です。ただただ好奇心と興味に導かれて、自宅のガレージで色々な粉を混ぜて遊んでいた感覚を思い出せ、という自戒の念。また、強制的に自宅に閉じ込められても、いつか外に出て岩を登ることに想いを馳せながらトレーニングを継続する。Garageというネーミングにはそんな意味が込められています。
High Garage
被験者クラブ・パブリックのフィードバックを得て、自宅トレーニングだけでなく、岩場やコンペでも使える仕様にできないかと研究を進化させてできたのが「High Garage」です。Garageの持つ長時間の持続性からヒントを得て、暑くてヌメる日本の夏でもハードトライができるチョークが作れるのではないかと試行錯誤した結果、30度以上になるとフリクションがよくなってくるという不思議な現象が得られました。
田嶋チャンネルでのgarageとhighgarageのテスト動画
下地として使うことで、明らかにヌメり手のクライマーのパフォーマンスが上がることがわかりました(岩を登れる環境があるクライマーはごく少数だったので、もっと実地テストが必要ですが)。以前粉末ラジオで橘園氏が熱望していた、「冬の指」です。夏でも、冬のようなカサカサとパリパリ感を。いや、そこまではいかないと思いますが、かなり理想に近い状態にもっていける、不思議な液体チョークです。持久性も非常に高いので、スポーツルートやトラッドでの利用にもおすすめです。
お礼
さいごに。
被験者クラブ・パブリックに参加いただいた方々に、勇気とやる気を注いでもらえて、とても貴重な時間でした。先が見えず、辛い時こそ前にすすむ。それを楽しんでくれる人がこんなにも大勢いて、しかも僕の好奇心を後押ししてくれる。顔も見たことのない沢山のクライマー。登りたくて登りたくて、でも外に出れないから自宅で一生懸命トレーニングをする人たち。性別、グレード、環境、経験値の全く異なる150人が、ただ、目の前のハングボードと向き合って、チョークという新しいオモチャで遊ぶことを楽しむ。今まで沢山の変わったことをしてきましたが、こんなにも自分に元気を与えてもらえたことはありません。しかも知らない人たちに。
緊急事態宣言の解除から、Garageの発売まで分刻みの忙しさで、なかなかこうして文章を書く時間がとれず遅くなりましたが、製品化のお知らせと共に、そのことをお伝えしました。今回は、被験者クラブにご参加いただき、テストにご協力いただき、暖かい手紙、お菓子、動画など送っていただき、元気を分けていただき、本当に本当にありがとうございました。
(ハカセ)