室岡照吾と部活道。

かれこれ10年前ほどになるだろうか。私はそれなりに上手に登れると思っていた。無我夢中で難しい課題へのトライを毎日毎日続けていた。ある日難しい課題の前で、持てない、弱い、と嘆く私に「弱いんじゃない、下手だから持てないんだ」。「ちゃんと、良い登りをしろよ」。と言ったのが室岡照吾氏であり、その日から私の長い試行錯誤の日々が始まることになった。

思い返すと、「腕は伸ばすんじゃない、曲げるんだ。曲げることで体がより安定する。足がより動く、自由度が増える。力が出る。」そう言いながら、具体的な例をあげて説明する室岡氏の姿が、今でも鮮明に思い出される。

多くの疑問を追求する日々が始まった。良い登りとは何か。上手いとは何か。強いとは何か。力をロスしない、効率的で高出力な登りとは。試行錯誤の最初の1年間は、むしろ下手になった。しかし今までの体に染み付いた登り方を変える試みは、ストレスよりも変化を感じる楽しさしか覚えていないのは不思議だ。

私にとってのトリガーポイントは足の出力の方向だった。あれは、全てが繋がり、疑問が解消された瞬間だった。良い登りとは何か。強いとは何か。自分の動きが劇的に変わり、成果が出始める。そして、疑問の解消は、新たな疑問を呼び、私は今までこの終わりのない疑問の渦に身を浸し続けている。

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