リユースは情緒とともに。

東京粉末創業以来のプロジェクトだったボトルのリユースですが、今年度より全国の取扱店様のご協力を経て、新しく始動することになりました。近日中に、全国の様々な協力店にて、ボトルの回収が始まります。
個人向けのREUSEプランもノベルティの種類を増やして継続しています。
*回収店舗リストは4月下旬にはアップする予定です

ボトル回収店舗はこちらから

リユースに出会うという楽しみ

山本です。
今年度中に、リユースボトル製品の販売を開始する予定です。これは、ボトルの傷や汚れ、マジックなどで書かれた文字、貼られたステッカーなどは除去せずに最低限の洗浄だけで再利用した製品です。

自分の使用したボトルが全国のどこかのクライマーに再利用され、いつかそのボトルと出会う日が来るかもしれません。自分用にと貼ったステッカー、目標達成を書き込んだマジック跡、それらは足跡となり、同じく過去の自分を越えようとするクライマーの手に届きます。こうした小さなロマンや感動は、不思議な出会いや奇跡的なクライミング体験をもたらします。

リユースとして受け継がれていくのは物だけじゃなく、目に見えない何か。この「目に見えない何か」というのはクライミング文化のうち80%以上を占めているのではないかと思うのです。

目に見えないもの

昨今のアクセス問題や、オリンピックにまつわる諸問題、クライミングジムの在り方であったり、はたまたソーシャルメディアの使い方だったり、そういったことのほとんどは目に見えるものに囚われて、目に見えない価値を忘れてしまっていることが理由であるような気がしています。

例えばそれは、岩を見た時の、言葉にできない「気持ちよさ」だったり、見ず知らずのクライマーの完登に感動したりという、一種の”情緒”なのかもしれません。
次の世代が自分たちと同じく、そういった情緒を感じられるエリアを残したい。ジムに来てくれたお客様にそういった情緒を感じる環境を提供したい。逆に、そのような努力や思いやりを感じて岩を登ったり、ジムで遊んだり。

同様に環境に対しても言えます。ひとときの損得や利益・コストよりも、未来の人間が自分たちと同じ気持ちでこの桜を見ることができるように、自分たちより健康で楽しく、それぞれの目標に向かって正しく歩める世界にしたいように。

環境問題は複雑です。沢山あるアプローチの一つ一つに、正しいという専門家、間違いだという専門家がいます。そして環境問題を口にするデメリットも沢山あることは身を以てわかります。
ですが、「目に見えないもの」、その情緒がいかにクライマーにとって大切か、ということに議論の余地はないと思うのです。

目に見えないものは形に残らないので、すぐに忘れてしまいます。忘れたくなくて、もしくは誰かとシェアしたくて形に残しても、その瞬間から、それは違うものになってしまいます。完登の記録を見ても、その感動は得られません。
それを成し遂げた本人、そこに居合わせた人や物だけが感じられる特別なものです。でも、それは全人類の誰もが持っているものです。だからこそ情緒はシェアできる。自身の完登の感動の話が、違う人の感動と重なって、同じ気持ちを共有できるのです。

クライミングの諸問題も、環境問題も、自分が今向き合っている課題も、みな同じではないでしょうか。
自分が向き合ってる課題。自然で、綺麗で、魅力的なラインを、自分の限界を超えて登りきりたい。その価値に、目に見えるものなどありません。

クライマーは、自分と向き合って壁を乗り越える楽しさを共有できる人たちです。私たち東京粉末は、クライミングの諸問題、自分たちの原材料問題、エネルギー問題、プラスチック問題、運送問題、もちろん多様なチョークブランドの中から選んでもらえるかどうか問題、それ以外にも問題だらけな現状について、一つ一つ、困難な壁を乗り越えるべく全力を尽くしています。なぜって、それは楽しいからです。こんな小さい会社でも、無理だと言われることを可能にすることが楽しいのです。そして、そういう苦しくも楽しい感覚をできるだけ多くの人とシェアしたいと思っています。

まずは、できることから。ボトルのリユースがそんな感じに有効利用されたら、それに勝る喜びはありません。きっとその喜びを今は知らない誰かと共感し合えることに期待して。

嬉しいメッセージ

最後に、ひとつだけ。
以前ボトルを返却していただいた箱の中にこんなメッセージが入っていました。

このメッセージだけで、ボトルリユースを実現させる理由は充分です。